金子美登氏と有機農業について語る

徳本です。

鳥取県農業大学校(倉吉市関金町)が年4回開催しているオープンカレッジの講師に、日本の有機農業の第一人者といわれている金子美登(かねこよしのり)氏が来られるという情報が飛び込んできました。

こんなチャンスはなかなか無い!ということでスケジュールを無理やり調整して参加してきました。しかも、講座の前夜は、県内有機農業関係者による金子氏を囲んでの親睦会があるということで、そちらも「ぜひに!」ということで、参加させて頂きました。

写真は金子美登氏と親睦会にて。

有機農業家 金子美登

金子美登氏について

戦後、高度経済成長と人口の増加に伴い、1961年農業基本法が施行。農業が生産性や合理性を高めるべく、化学肥料や化学合成農薬の使用、作業の機械化が大きく推進されてきました。その後、生産性が短期間で飛躍的に伸びたものの、環境や人間への悪影響が社会的に少しずつ懸念され始めたのが1970年代です。

金子美登氏は、その頃から有機農業を実践し始め、約40年以上取り組んでこられた方です。近年は、定期的視察・研修生の受け入れ、全国規模の有機農業組織の理事長や理事、関連法案の政策審議委員なども兼任され、有機農業の普及活動にも力をいれておられます。2010年にはNHKプロフェッショナルにも出演され話題になりました。

私にとっては雲の上の様の存在の方でしたが、わったい菜やTREE&NORFの取り組み、これからやりたいこと、またどうしても聞いてみたかったことを話すなど、特に懇親会では金子さんと濃い時間を過ごすことができました。しかも3次会では、金子さんのとなりでカラオケ3曲も歌わせて頂きましたです、はい。

有機農業とは

有機農業とは、化学的に合成された肥料と農薬を使用せず、また遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減した栽培方法を用いた農業です。

国内では2006年有機農業推進法が制定されました。登録認定機関に検査・認定を受けた農業者が栽培する農作物に「有機JASマーク」を添付・表示し、初めて有機○○、オーガニック○○と謳って良いとされています。わったい菜の商品では、気高オーガニック倶楽部の有機米コシヒカリや、鳥取中村のエゴマ油などがそれに当たります(一覧はこちら)。

有機農業について考えるとき、いつも思うことがあります。

有機農業は、本当に産業として成り立つのか?

確かに生物多様性が活かされた持続的な環境・土づくりで作られた野菜は美味い。

しかし、高い経験値と栽培技術、膨大な手間暇(コスト)が掛かります。当然その分、売価は一般的な野菜相場にくらべてはるかに高くなる。まだまだ少数派な有機農業生産者は、地域との関係性に悩みはつきないし、ある程度有機的な土に転換されるまでの期間の収量(収入)に大きなリスクが伴います。つまり、作り手の適正として常人ではない精神力・忍耐力が必要とされます。

つまり、作り手の参入障壁の高さ、マーケットの拡張性の低さにおいて、産業として成り立つ資質に大きく欠けるのではないかという懸念です。

わたしの考え

色々な意見、見方はありますが、わたしは、本当に良い理念、商品、サービスであれば、マーケットは自然と大きくなっていくし、社会性をより帯びてくると考えています。グローバル視点で日本が有機・オーガニック分野でまだまだ市場規模が小さいのは、特に「伝える」という部分で顧客目線になり切れていないと感じています。

一番の理想形の農業は、自家採取、その地域で育まれた有機質肥料を循環使用し、作物を育て、その地域の人たちが買い支える。地域ごとに作物の多様性・独自性が生まれ、それを起点にそれぞれの風土に根差した食文化が育まれ、次世代に受け継がれていく。この繊細で本質的に豊かな価値が、どこまでこれからの自由化の時代に残っていけるのか、まだ誰にも分りません。

理念はぶらさず、しかし事業(産業)として成長させていき、鳥取から食の世界ブランドを作るというのが私たちのミッションであり、その手法・手段こそ、私たちの独自性であり、技術であると考え、日々研鑽しています。轍の無い道を歩くことも多く、スタッフ間でぶつかり合うことも多々です。

金子美登氏の考え

この一見矛盾し、相反する価値観を持つ有機農業と産業についての自分の考えを金子氏に聞いてもらい、そして意見を伺いました。私は当初「それは相成れないものだから一緒に考えない方がいいよ」と否定されると思っていました。しかし、

「有機農業での大規模化も可能だし、もちろん良いと思うよ。これからの有機農業で大切なのは、生産者も多様化し共存しいくことだ。大規模な形態があっても良いし、家庭菜園のような小規模かたちも良い。その為には政策的なプラットフォームも整備していく必要がある」

予想に反して、金子氏は有機農業と産業の関係を肯定的に捉え、さらに今後の関係法案でもその構造的な問題を解決する為の施策を模索しているとのことでした。

世界に広がる金子氏の理念

40ヶ国以上から多くの研修生を受け入れる金子氏。氏の元を巣立った有機農業家の卵たちは独立し、世界中で活躍しています。またその独立した農業家も研修生を受け入れ、金子氏の理念を起点に農業を営んでいきます。その経済規模や影響力はひとつの産業になりつつあると言っても過言ではないかもしれません。さらに先を見据えた金子氏の視線と懐の広さに、震えるような感動を覚えました。

「いつでも遊びにきて良いよ」と言っていただいた埼玉県小川町にある金子氏が主宰する霧里農場。近い将来、ぜひ伺いたいと思います。


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